大名小路を歩く 〜旧安中藩郡奉行役宅〜
旧中山道を百数10m上がり切った先に、ひと際目を引く萱葺き屋根がある。大名小路と呼ばれる通りには、その名にふさわしい屋敷が軒を連ねている。かつてこの地を治めた安中藩・藩主板倉勝明の側近、山田三郎(1804〜1862年)が住んだと伝えられ、およそこの頃の建築とされるのが「旧安中藩郡奉行役宅」だ。
重厚な長屋門をくぐると、いにしえを思わせる質実な造りの母屋が目に入る。長屋門は木造平屋建て萱葺寄棟造りで桁行7間(12.93m)、梁間2間(3.64m)、母屋は木造平屋建て萱葺寄棟造り・曲がり屋で桁行10間(18.77m)、梁間2間半(4.67m)とされている。この建物は平成5、6年度に古図面と建物に残る痕跡をもとに、当時の姿に復元したものという。
江戸期の面影をしのばせるこの役宅には山田三郎の後、猪狩幾右衛門懐忠(1820〜1883年)が入ったといい、両者ともに藩の郡奉行を務めた。郡奉行とは、村方の警察権や裁判権を有した役職で、配下には代官が置かれて領内の農民ら統治を担ったという。
母屋の北側には玄関式台があり、三畳の「ゲンカン」を入ると、その左手に8畳の「ジョウダン」がある。その南には8畳の「ナンド」、10畳の「ザシキ」、15畳の「オカッテ」が並び、一番西に土間が配置されている。建物の中には安中藩に関する解説パネル、紹介写真が展示され、ボランティアガイドによる解説を聞くことも可能。「当時、秋から冬にかけては、北側の部屋は寒かったことでしょう。客に長居をされないためにも、この位置にジョウダンの間が配置されたのでは」と語るガイドさん。南側のザシキは庭に面しており、時代劇などでもお馴染みの『おしらす』のような雰囲気だ。「郡奉行とはいえ、台所事情は厳しいものだったといいます。庭では野菜などを盛んに作っていたようですよ。また、ここで村方のお裁きもあったのではないでしょうか」と説明してくれた。
ガイドさんのお話では、母屋の玄関脇に植えられた紅葉は、京都から取り寄せられたものだとか。真っ赤に色づく雅やかな紅葉に心を魅かれながら、役宅を後にした。
【旧安中藩郡奉行役宅】
住所 安中市安中3丁目6−9
電話 027・381・3855
開館時間 3〜11月 9:00〜17:00 12〜12月 9:00〜16:30
休館日 月曜(祝日の場合は翌日) 年末年始
入館料 大人210円 高校生以下無料 ※安中市民は入館無料