郷原地区限定?! 語り継がれる怪物(?)『ボースコ』とは
中山道が通る郷原地区出身の母に聞いた話だが・・・。
幼い頃「ボースコ」と呼ばれる謎の化け物伝説を周囲の大人達から聞かされていたという。
「早く寝て良い子にしてないとボースコがやって来るよ!」と言う風に…。
母自身もその正体については詳しく聞かされていなかったそうだが、
正体が解らないだけに、とても恐ろしい妖怪のようなものを想像しては怯えていたという。
しかしこのボースコ、郷原地区周辺限定の局地的な伝説なのかもしれない。
磯部出身の父に話せば「全く聞いた事がない」と言われて、それまで誰もが知っているボースコだと思っていた母は、ショックを受ける。
「ボースコ」とは、一体なんだったのか?
『この謎の生き物ボースコを詳しく掘り下げて調べてみよ・・』と言う父の指示で、
ボースコ伝説を母に聞かせた張本人である祖母に、話を聞いてみる事にした。
「ボースコという妖怪の話をした事を覚えている?」
「ボースコじゃないよ!ボーズコっていうの!それかボーズ」
「どんな生き物なの?」
「真夜中に気味の悪い声で鳴く鳥だと聞いたけど、姿は知らない」
瞬時に「鵺(ぬえ)」が頭を過ぎった。
鵺とは平安時代から伝わる妖怪伝説で、猿の顔に虎の手足を持つ化物であるとか、
顔は猿ではないが虎のような胴体であるとか、未だ正体不明の『もののけの類』である。
そのいかつい体つきとは裏腹な、鳥ような不気味で寂しげな鳴き声は、
不吉なもののように聞こえたようで、
その寂しげな鳴き声は平安時代の人々を恐怖に陥れたという。
自然や山に囲まれて暮らしていた昔の人達は夜遅くに奇妙な鳴き声で鳴く正体不明の鳥と人間の恐怖心を利用し、恐ろしい化物伝説を誕生させた。
そうして、言う事を聞かず手を焼かせる子供に、脅かすように語って聞かせる。
語り継がれる過程で、さまざまな語り手によってアレンジが加えられ、
オリジナルのお伽ばなしへと昇華されてできた、それこそが「ボースコ伝説」だったのだろう。
ちなみに「ボースコ」「ボスコ」「ボーズコ」「ボーズ」と言う名を持った鳥類が存在するかどうか 調べてみたが、そのような名の鳥は見つからなかった。何故、「ボースコ」なる名称で語り継がれているのか、名称の意味までは真相究明が叶わなかった。
記事 :柳生芦花(柳生聡の娘)