「こんな時代だからこそ、あえてのアナクロ」 ? ~菓舗たむら~
JR信越線磯部駅から続く温泉街を北上すること、徒歩およそ30分。県道220号線と国道18号線が交わる通りにあるのが「菓舗たむら」です。市内のみならず市外や群馬県外でも「たむら」の呼称で親しまれる老舗の看板商品は、何といっても「磯部せんべい」。個人で味わうだけでなく、贈り物にも重宝されるそう。この季節にはお中元としても選ばれており、何を隠そう我が家でも頂いたことがあるほど(!)です。
数年前に拡張したという店舗には、なんとお酒の陳列も。お酒の取り扱い数も然ることながら、それに劣らず数十種類にもおよぶ菓子類が余すところなく陳列されています。その味は甘い和菓子や洋菓子をはじめ、しょっぱめのおせんべい類に至るまで、実にさまざま。これだけの種類にも関わらず、店内で扱われている商品はほぼ手作りだと言います。
この「たむら」で二十数年にわたって、どら焼きなどの和菓子づくりを担当している女性に話を聞きました。「溶けやすいものや固まりやすいものを扱っている関係上、暑さや寒さに耐えながらの仕事です。一日中立ちっぱなしですが、それが却って健康にいいのかも。実は、私が一番の”たむらファン”なんです」。店舗に隣接しているこの製造場。来店の際、運がよければガラス越しに見学できることも。
こうした生菓子をはじめ、店内にズラリと陳列されている商品は、どれも安中市内の自社工場で、厳しい品質基準に基づいて製造されています。どれも手づくりが基本で、使用する材料は群馬県産の小麦粉など「地産地消」にもこだわっていることのこと。こうした取り組みについて店舗の方は「地元の方々に愛され、全国からお越しになるお客様をお迎えする上で当然の行い」だと話します。
「『より多くのお客様に商品をお届けしたい』。そうした思いからインターネットへ事業拡大し、機械を導入して大量生産を試みたこともありました。でも、目指した味には届かなかった。やはり人の手による『手づくり』に勝るものはないと気付いたんです。現在は、機械化を廃止して手づくりにこだわった製造を続けています。この店舗でしかご購入いただけない商品もありますが、ありがたいことに、全国からお見えになるお客様は増えたように思います」。
以前は、注文数に生産が追いつかないような時期もあったインターネット販売。現在では縮小して、一部の商品のみの取り扱いとなっているものの、引き続き好評を得ているそう。「老舗」と呼ばれる存在は、えてして「かたくな」ともいえる姿勢で伝統を守り続けるもの。そうした概念をかなぐり捨てて冒険し、再び原点に戻った“あえての”アナクロ(時代錯誤)を、ぜひ味わってみてくださいね。

広々とした店内

老舗の趣きを感じさせるノスタルジックな雰囲気の買い物カゴ

カルシウム味……って何味なの!? 正解は店舗でどうぞ☆
【菓舗たむら】
〒379-0135 群馬県安中市郷原255-2
TEL 027-385-6120
定休日 無休
営業時間 8:30 ~ 19:30
楽天市場 http://www.rakuten.co.jp/i-senbei/